最も良く使われるプレイセラピーの道具と言えば、クレヨンや色鉛筆、紙な どのお絵かきのためのもの、そして、はさみや糊などの工作用の道具ではないでしょうか。子どもはそれらのものを使って、実にたくさんのものを表現します。ある5歳の男の子は、何枚もの紙にわたって、竜と男の子の戦い の絵を描き、お話を作って、私に生き生きと物語ってくれました。もうすぐ3歳になる男の子は、真剣にそして大胆に、丸や線をたくさん描きながら、電車が好きという彼の気持ちをとても上手に表現しました。ある6歳になる女の子は、自分の理想とする想像上の動物園を作るために、紙を切り取ったり貼ったり、色を描いたりしながら、動物園のおりや看板を自分の好みにぴったりくるようにとても楽しそうに 作りました。
 プレイセラピーで、クレヨンや色鉛筆、紙工作の道具を置いておくと、たいていの子どもたちはその道具を使いこなし、自分の世界を上手に作り上げます。そのため、これらの道具は、表現を促進するための道具と呼ばれているのです。ともすれば、絵や工作で子どもが表現している内容だけにとらわれてしまうことがありますが、実は、その中で子どもが体験しているプロセスそのものにも意味があります(Malchiodi, 1998, 2008)。それは、描くこと、作ることで、自分の体験を視覚的に距離をとって見つめ直す、ということ、そして描く、作 る、という行為を行うことで、複数の感覚を使って自分の体験を生き生きと探索していく、ということです。さらに、プレイセラピストやその他の大人など、一緒にその場にいる大人との関係を子どもがどう体験しているかも、工作や絵の表現に影響を与えます(Malchiodi, 1998)。

 

 
  そういった、手を使って描いたり作ったりすることの効果を活用するために、セラピストが子どもに特定のものを描くように提案してみることもあります。
人の絵、木の絵、家の絵、そして家族が何かをし ているところ、などを描いてもらうことが多いようです(Webb, 1994)。また、今の自分の気持ちを色で表わすとどんな感じかを描く遊びを提案することもあります(Schaefer, 2002)。それらによっても、子どもがその表現している内容、そしてそれを表現している途中の様子から、子どもが自分自 身や世界、いまこの場にいる大人との関係をどのように体験しているのか、ということを一緒に体験することが可 能です。

  以前、画家の、ピカソや岡本太郎、横尾忠則が絵を描いているところを、それぞれ映像で見たことがあります。彼らは、製作過程で、作ったものに大胆に色や線を加えていって、できあがりと思ったも のを一見台無しにするほど、どんどん壊しながら先に進んでいき、まったく新しいものをキャンバスに生みだし続けて いました。それを見ていると、出来上がった作品だけを見たときよりも、絵を描いているプロセスそのものに、 どきどきしたり、わくわくしたり、いろいろな感情が揺さぶられました。子どもが真剣に何かを作っているときには、そ の画家たちと全く同じなのだと思います。何かを作るという行為を通して、子どもは自分をさまざまに探求しているということを、多くの専門家の皆さんは 体験からよくご存じなのではないでしょうか。子どもに限らず、ワークショップで、子どもの専門家の大人たちに 絵を描いてもらうと、皆さんそのプロセスの中でいろんな感情を表現し、製作途中のフロアは、ただ講義を聴いているときよ りも参加者の方々の醸し出す色合いがまさに豊かになるのです。子どもに関わる専門家の方は、自分でも絵を描いたり何かを作ったりしてみることをぜひお薦めします!

 

このよ アート、工作用具を準備する際の配慮点として以下のよなことが考えられます。

1.     紙やマーカー、色鉛筆、絵の具などは色々な色を準備する寒色、暖色の両方を入れる)。

2.     マーカー、色鉛筆、鉛筆が使える状態であるかを毎回確認しておくマーカーが乾いて書けなくなって いないか、鉛筆、色鉛筆を削る必要があるかなど)。

3.     鉛筆と対で消しゴムも忘れずにマーカーや色鉛筆があるのに、鉛筆を子どもが選ぶ場合、「失敗すること」を 恐れてそのよな選択をしていることが多くあります。「鉛筆なら消して何度でも書き直せる」とい安心感があるので、そのためにも消しゴムは忘れないよにしましょ)。

4.     紙は沢山置いてあればあるほど、子どもはそれ全部を使おとする傾向があるので、数枚だけ目に見える所においておく。

5.     絵の具を置く場合は、水へのアクセスを考えておく。また絵の具がこぼれても大丈夫な環境を設定する例えば絨毯ではない所に絵の具セットをおく、絨毯の場合はビニールシートを敷いておくなど)。またインテーク時に、プレイセラピー中、絵の具を使うことになるかもしれないので、出来るだけ汚れても構わない洋服を子どもに着せて来室するように保護者の方に伝えておくと良いかもしれません。

6.     絵の具やマーカーを置く場合は、もし子どもが自分の体のどこか、またはセラピストの体のどこかにそれらで何かを書ことした場合は、どこまで許容してどこから制限設定をするかとガイドラインを前もって考えておくことも助けになるかもしれませんケースによって許容する範囲が変わる場合もあるかもしれませ

7.     作った作品を子どもが持って帰りたがる場合があります。作品の持ち帰りをOKとするかどかは、それぞれのセラピストが立脚する理論や子どもの状況によって異なると思います。しかし、デジタルカメラで子どもの作品の写真を取れるよにして おくと、万が一子どもが作品を持って帰った場合でも、記録として写真を取っておく事ができます。またその反対で、記録として作品を保存し、写真を子どもにあげることもできます。

参考文献
Malchiodi, C.A. (1998). Understanding Children's Drawings. New York: Guilford.
Malchiodi, C.A. (Ed) (2008) Creative Interventions with Traumatized Children. New York: Guilford.
Webb, N.B. (1994). Techniques of Play Therapy: A Clinical Demonstration. New York: Guilford. (DVD)
Schaefer, C.E. & Cangelosi, D.M. (Eds). (2002). Play Therapy Techiniques. New Jersey: Jason Aronson.



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