「世話する・される愛情をかける・かけられる」おもちゃのカテゴリーの中で欠かせないのが、このお医者さんセットです。

 子どもがお医者さんや看護婦さんになって病気の人や動物を助けてあげるというシーンはよくプレイセラピーの中で繰り広げられます。また一方で、このおもちゃを使って、毒の薬を飲ませるとか、とても痛い注射を誰かにするなどと言った攻撃的なエネルギーが込められた遊びを行う子どもも沢山います。プレイセラピー用のおもちゃは、便宜上カテゴリー別に分けてリストアップされていますが、おもちゃは必ずしもそのカテゴリーの内容に沿った遊びの中のみで使われるわけではないということを、プレイセラピストは留意しておく必要があります。

 おもちゃ屋さんで買える規定のお医者さんセットに、空になった薬の入れ物や本物の絆創膏を数枚に入れておくと良いでしょう。絆創膏は、子どもが紙で指を切ったなど、実際に子どもがプレイルームの中でちょっとした怪我をした時の処置として使うこともできます。

 

 Dr. Garry Landrethのデモンストレーションセッションのビデオ“Child-Centered Play Therapy”の中で、女の子がこのお医者さんセットを使ってDr. Landrethとやりとりするシーンがあります。自分がDr. Landrethのことを色々なおもちゃの医療器具でチェックし、そして今度は交代してDr. Landrethに自分のことをチェックしてもらう。この子がとてもDr. Landrethのことを信頼していることが顕著に現れている私が大好きな一シーンです。またこの女の子が聴診器を使ってDr. Landrethのことをチェックしようとするとき、聴診器の先を手のひらで数回こする仕草をします。聴診器の先は冷たいので、こうやってお医者さんが摩擦で温めてから体に当ててくれることをこの子はしっかりと見ているのです。子どもの観察力の鋭さを改めて実感させられるシーンでもあります。

 小さな時に深刻なネグレクトを受けてきた子ども達の中には「泣くことを諦めた」子どもが多くいます。泣いても泣いても誰も助けに来てくれない、そんな体験を何度となく繰り返して行くうちに「泣いても仕方が無い。無意味だ。」という結論に達し泣く事を諦めてしまうのです。そんな子どもは、転んでも、壁にぶつかっても、泣く事は無く、あたかも何もなかったかのようにその場を去ります。そんな子ども達がプレイセラピーの中で、「私が赤ちゃんでね、泣く真似するから、そうしたらお医者さんセットもってすぐに飛んできてね」などと言って遊びの指示をプレイセラピストに出して来る事は稀ではありません。お医者さんセットは、子どもが自分は愛情や世話に値する存在であるという認識をセラピーの中で育てて行く過程によく使われるおもちゃです。

 

注意:

  • 本物の絆創膏を入れる場合は数枚にしておきましょう。子ども達はあればあるほど使ってしまう傾向があるので、箱ごとは入れないようにしましょう。
  • 聴診器を使う時、子どもは自分の病院での体験を元にして遊ぶため、セラピストにシャツをめくるように言って来る事があります。そのような要求にどのようにして制限を設定するか、前にもって考えておくと、そのような状況が起こった時に冷静に対応できるでしょう。
  • 同じ理由でお医者さんセットの中のおもちゃの医療器具を、子どもは実際に自分の耳に入れたり、口の中に入れようとすることがあります。そのため、このおもちゃは清潔に保っておく必要があります(子どもの体に触れたら洗浄するなどしましょう)。






(文責:ファリス小川)


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