プレイルームによく置かれているおもちゃの一つに、人形そしてドールハウスがあります。子どもが自分、または家族夫々に対してどのような人形を選ぶか、そ して選んだ人形たちでどのように遊ぶかには、その子の自己像、家族像、そして家族の力動、または家族に対する自分の望みなどが反映されていることが良くあ ります。例えば、離婚したばかりの両親を持つ3歳の女の子は、プレイセラピー中何も言いませんでしたが、お父さん、お母さんらしき人形を選び、それらを糊 でくっつけようとする遊びを何回も繰り返しました。又、両親のDVを目撃し続けた6歳になる男の子は、プレイセラピー 中、初めは母親用に小さな子犬の人形を選んでいましたが、母親自身がセラピーを受け強くなって行く過程と共に、その後、馬、そして最後にはたくましい雌ラ イオンの人形を母親として使うようになりました。 

 人形に自分を投影して、その人形をプレイルームの何処かに隠し、セラピストがそれを見つけると言ったいわゆる「間接的かくれんぼ」を行う子どももいます (Frankiel,1993)。様々な喪失体験をした子どもにとって「かくれんぼ」は逃れられない不安感を誘発する遊びに成りかねない事があります。 「相手は隠れている自分を置いて何処かにいってしまわないだろうか?」「自分は相手が“見つけたい”と思うほどの価値があるのか?」といった愛着問題から 付随してくる不安や疑いが、無意識・意識的に子どもを襲うのです。そのような不安が根底にある場合は、自分の代わりに人形を隠し、それを見つけてもらうというかたちにすることで、起こりえる相手からの拒絶や無視、とり残されるという体験も、間接的なものになるという防衛ができるのです。このように、自分が実際に言ったり行動したりする代わりに、人形に自分を投影し、何かを言わせたりやらせたりすることで、その表現から「心理的距離」が取れ、安全感を維持できるということがあります。このような心理的距離の問題と、そして子どもが動物や植物、物を「擬人化」する傾向を配慮し、「人間」の人形の他に、「動物」の人形の家族を置いておくと、そちらの方を好んで使う子ども(特に年齢の小さい子ども)が割りと多くいます(写真1.2)。また指示的(Directive)なプレイセラピーのアプローチでもジェノグラムを作るのに子どもに人形を使ってもらう方法などがあり(Gil, 2006) 人形は様々な方法でセラピーに取り入れて行く事ができるとても便利なおもちゃなのです。

写真1  

写真2 


 人形・ドールハウスをプレイルームに置く場合の配慮点として以下のようなことがあると思います。

   1.  人間の人形の場合、座らせたり、ポーズを取らせることができる様に曲げられ(bendable)、また洋服の着せ替えができるようなものの方が、子どもが遊びの中で、自分のイメージにより近いものを人形を通して表現できます。

   2.  子どもが一緒に住んでいる家族に限らず、その子の生活の中で重要な人(例えば祖父母、学校の先生、近所のおばさん、ソーシャルワーカー、医師、ペットなど)が色々と選べるように、人形はいくつかの種類を準備しておきましょう。

   3.  ドールハウスはあまり立派な物ではなくて、シンプルな物の方が現実的で、子どもが自分の家と見なしやすい場合があります。又、予算上ドールハウスが買えない場合などは、大きめの箱の側面に窓やドアをくりに抜き、箱の底に縦横線を書けばそれだけで簡単ドールハウスが出来上がります(写真3.4)。

   4.  子どもによっては「自分は家族皆とは異なっている」という自己像を持っている場合があります。そのような事も表現できるように、動物の家族に人形を置く場合には、熊の家族の中に白熊やパンダを一つ入れるなどの考慮もしておくと良いでしょう(写真1.2)

写真3 

写真4  

参考文献:

Frankiel, R. V. (1993). Hide-and-seek in the playroom: On objective loss and transference in child treatment. Psychoanalytic Review,80(3).341-359

Gil, E. (2006). Helping abused and traumatized children: Integrating directive and nondirective approaches. New York: Guildford.





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