先日、アメ リカで最も良く読まれている新聞の一つ、ニューヨークタイムズに「子ども達の遊びを復活させようとする気運が高まっている」という記事が掲載されていまし た。「これはプレイセラピストには嬉しいニュースかも」と思い読み始めると、正に、プレイセラピストとして保護者の方々に、そして地域に啓蒙して行きたい ことが書かれていたので、ここでちょっと紹介したいと思います。

本文をご覧になりたい方はこちらから。

http://www.nytimes.com/2011/01/06/garden/06play.html?_r=1&scp=1&sq=effort%20to%20restore%20children&st=cse


 記事には、息子の幼稚園の見学に行った、あるお母さんのことが書かれています。小さな机と壁にそってコンピューターが置かれているこの幼稚園の風景は、このお母さんが、1985年に自分が通った砂箱や、ブロック、おもちゃが置かれていた幼稚園とは随分と異なるものでした。

子ども達が、創造的遊び、「ごっご」遊びをする場が無くなってきている...このお母さんはため息をついて言います。

 子どもの遊びという文化がアメリカから消えて行っている。ある調査結果によると、現在、アメリカの子ども達は平均して7時間38分間、スクリーン(コンピューターやテレビ)の前で過ごしているそうです。そして5人に一人の子どもしか家から歩いて行ける距離に公園が無いそうです。

 実は、大 人の行動も遊びの消失に貢献しているということもこの記事に書かれています。携帯電話の虜になっている親、家でも仕事のストレスを抱え込み、裏庭から聞こ えてくる子ども達が遊んでいる声に耐えられない親、そして習い事で子どものスケジュールを埋めてしまう親。その他、学校からの宿題や、土地の安全性の問題 なども遊びの時間を略奪しているのです。

 どうして 遊びがそんなに大切なのだろうか?遊びを推奨している科学者、心理学者、教育者達は、生活や仕事で成功するのに必要な社会的そして知的スキルの多くは、子 ども時代の遊びの中で身につけられていると言っています。自分の衝動を抑えること、交渉する、問題解決をする、創造的に考える、チームの一員として何かを 成し遂げる、そのようなことを子ども達はまず遊びを通して身につけて行くのです。

 記事の中で、専門家は遊びを「子ども達が自然と始め、そして導いて行くゲームや活動のこと"...define play as a game or activity initiated and directed by children," と 定義しています。故に既に使い方が決まっていて、子どもがそれに従う方法のみでしか関れないようなおもちゃを使っても、それは「遊び」とは言えないので す。この定義は、ゲリーランドレスの遊びの定義、(遊びは)自律で、自発的(遊びを行う動機が外部からの報酬によらないもの)、目的/目標志向的ではな く、子どもにとって意義があるもの(Landreth, 2002)、と共通しているところがあります。

近年の受け身の遊びに慣れている子ども達にとって、遊びの中で主導権をにぎり、自分の想像力を元に遊びを展開していくことに始めは躊躇する子もいるかもしれません。でも、子どもには自ら遊びを率先していく力が潜在するのです。

そ して子どもの遊びを推奨していく中で、大人の態度も変化していかなくてはなりません。この記事では主に三つのことが親に要求されています。一つは、あまり スケジュールを構造化しすぎず、柔軟性をもたせること。二つ目は、子どもが遊んでいる時、子どもの散らかしにもう少し許容的になること。そして三つ目は遊 びの中で、大人は子どもにどのように遊ぶのかを教えることなく、子ども達に主導権を持たせること。

  このような態度は、子ども中心プレイセラピストに求められる対応と重なるところがあります。例えば、子ども中心プレイセラピーの中でラベリングを行わないことも(ラベリングについてはこちらの記事を参考)、子どもに遊びの主導権を委ねるための繊細な配慮なのです。

 このような本当の「遊び」を奨励しようと、ニューヨークにある大きな公園Central Park で 大規模な「お遊び会」が開かれたこともこの記事に書いてあります。粘土やチョーク、ブロックといった本来の「遊び」ができるおもちゃを厳選し、大量に公園 に持ち込み、子ども達はそれらを使って遊び、そしてそこで行われている遊びの意義を主催者たちが親達に伝える。そんなお遊び会には何と5万人の人が参加し たそうです。

 いつか「代々木公園で日本最大のお遊び会」なんかがができたらいいですね。子どもも親も想像力を膨らませて一緒に遊ぶ時間がもっと持てる社会になることを願います。


参考文献

Landreth, G. L. (2002). Play therapy: The art of the relationship (2nd ed.). New York: Brunner-Routledge.




(文責:ファリス小川裕美子)

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