落ち着いた気持ちを育てる遊び

 

 親が子どもにできることはたくさんたくさんあります。例 えば、日常的な食べることや生活することなどの衣食住にかかわる人間の生活の上での最も基本的なこと。人を信頼することや愛情を分かち合うこと、そして言 葉や知識、経験など生きていくために必要なたくさんのことを教えていくこと。プレイセラピーの中でも、親が子どもにできることからヒントを得たとても効果 的な方法があります。それは、「セラプレイTheraplay」と呼ばれるもので、セラプレイは、そういった子育ての中で親が自然とやっていることをもと にした、子どもと大人のよりよい関係を育てていく方法として様々なお子さんのつまづきや問題の予防に用いることができます。

 その中で取り上げられている、大人が子どもに対してできること の一つとしてnurtureというものがあります(Jernberg & Booth, 1999)。日本語では、「養育」「慈愛」「慈しみ」と訳されるものですが、愛情や温かさ、優しさ、穏やかな落ち着いた気持ち、居心地の良さなどを親が子 どもに向けて与えることを意味しています。親に優しく接してもらうことで、子どもはその愛情を、自分に対して、そして、人や世界に対して持つことが可能に なります。親に優しくなだめてもらったり、落ち着かせてもらうことを幼い頃にたくさん経験していると、子どもは自分で自分の感情をコントロールしたり波 だった気持ちをなだめることができるなど、自分で落ち着いた気持ちになる方法を、親との経験を取り入れながら、自然と学んでいきます。このように、子ども にとって、「慈しむこと」を教えてもらう関わりは、成長にとって、とてもとても大事なものなのです。

 これは、普段の中で何気なく皆さんがやってきたことが入ってい ます。例えば、子どもにミルクを飲ませているときに、優しく抱っこしてぬくもりを与えること、顔を覗き込んで語りかけること、とんとん、と優しく体をなで たりさすったりすること、などが挙げられます。あるいは、子どもがどこかに体をぶつけたり転んだりして痛い思いをしたときに、そこをさすってあげて「痛 かったねー。痛いの痛いのとんでいけー。」と慰めてあげることなども、慈しみの心を育てている行動です。寝る前に一緒に絵本を読んで、親の声を聞かせてあ げたり、子守唄を歌ってあげたりすることなども、慈しみの行動です。

 いかがでしょうか?本当に普段皆さんが何気なくやっていること が、子どもの成長にとっては最も大事な教育の一つなのだということがわかっていただけたでしょうか?特別なことは何もする必要がなく、自分にとって自然に できることがお子さんにとって、すでにとてもすばらしいことなのだということを、これまで私が出会ってきたお母様やお父様も知ったときに、ほっとしたり、 誇りに思ったりなさってきました。皆さんはいかがでしょうか?

 でも、そうは言っても、親ごさんにも物理的・気持ち的に余裕が なくて、そういったことを自然にはできないときがあると思います。あるいは、もう子どもが大きくなって、あまり甘えてこなくなったことからこういった触れ 合いから自然と遠のいてしまっている場合もあると思います。そういうときには、一日の少しの時間でいいので、普段の日常生活の中でこういう遊びをまずは一 つだけやってみることを提案します。

1 ハンドクリームやローションを手や足に塗ってあげる。そのときに子どもが好きなゆっくりとしたテンポの歌を歌いながら塗ってあげる。その後、手や足をさすって、暖めてあげる。

2 手を洗うときに、二人で一緒に石けんを塗り合ってこすり、それを一緒にお互いの手をもみ合いながら洗い流す。そのあと、消毒液をつけるときには同じように、二人でお互いの手をもみ合いながら手の隅々まで液をつける。

3 丸めたティッシュやコットンボールを親が持って、子どもの手 を持ち、どこか痛いところないかなー?と子どもに聞いて、傷あとなどを「ここは前に怪我したねー。いたかったねー」と言って、コットンなどで触る。新しい 怪我には、「いたいのいたいのとんでいけー」と言いながら、コットンなどでやさしく触る。あまりにもくすぐったがる子どもには、少し強めにぎゅっぎゅっと 触りましょう。

4 コットンや丸めたティッシュなどを親が持って、子どもに目をつぶらせ、子どものいやがらない顔や体の一部をコットンなどで触って、どこに触ったかを当てる遊び。(これは親子で交代でやっても楽しいです)

5 あるいは、子どもの手の平や背中に字や形を書いて何を書いたかを当てる遊び。(これも交代でやっても楽しいです)

 以上のような遊びが挙げられますが、きっとほかにも、お子さん と親御さんの工夫でいろんな遊びかたが考えられると思います。いずれも、競争の遊びになりすぎず、のんびりとした雰囲気で親御さんから遊びをしかけてみる のがいいと思います。一日の終わりや、学校や園から帰ってきた後などに、どうぞまずは一つの遊びから試してみるのはいかがでしょうか。お子さんが落ち着い た気持ちになるのをきっと助けることができると思います。

 

参考文献

Jernberg & Booth (1999) Theraplay, second edition, Jossey-Bass



(文責:湯野貴子)


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