第九回 今回ご紹介する本

Schaefer, C., & Cangelosi, M. (Eds). (2002) Play Therapy Techniques: second edition. New Jersey: Jason Aronson

 

「小さな図書館」では、 これまで、プレイセラピーの主要な理論を解説した著書を紹介してきました。また、それぞれの理論の基盤となる遊びの持つ力についても、重要な著書を紹介しました。


 今回ご紹介する本 は、プレイセラピーの「技法」についての本です。「技法」もまた、プレイセラピーにとって、とても重要な一つの側面です。しかし、 「技法」というと、皆さん、どういうイメージを持たれるでしょうか?私は以前、「技法」という言葉に、なぜかしっくり来ないときがあ りました。私のイメージの中では、セラピストが指示的になって、子どもに活動をどんどん提案するような、心と心のふれあい からは少し外れた、そんなイメージを持っていたのです。以前の私と同じように、「技法」という言葉に対して、「理論」という言葉より も、な んとなくマニュアル的な雰囲気を感じたり、「技法」を学んでそれを用いることに抵抗を感じたりする臨床家の方も多くいらっしゃるのではないでしょう か。

 確かに、子どもに対して、活動や態度の技法だけを、次々に何の脈絡もなく用いることは、間違った技法の理解の仕方であり、間違った用い方です。多くの技法への良くないイメージは、このような間違った技法の理解や使われ方か ら生まれているのではないかと思います。この「Play Therapy Techniques」という本は、プレイセラピーに用い られている様々な素材が持つ治療的な意味を紹介し、どのような素材によってどのような治療的な遊びが促進されたり、子どもがどのような活動を自らの成長のために用いていくのか、ということを解説した、古典的な論文や新しい論文を集めている、かなり読み応 えのある本です。素材や活動をマニュアル的に紹介する本という、私の技法の著書への良くないイメージとは程遠く、象徴的な表現を促すようなおもちゃのうち、例えば、家のおもちゃや人形、パペット、仮装用の衣装、電話のおもちゃ、あるいは自然の素材である 粘土や砂、水などなど、私たちがプレイルームでよく見る素材たちが、それぞれどのような意味を持っているのかを、プレイセ ラピー理論や子どもの発達理論などから、かなり詳細に解説しています。ひとつひとつの素材によって、これほど子どもの活動に与える刺 激がそれぞれ異なることを知ると、遊びの素材に無自覚でいることは、治療的な潜在性を見逃していることであると気付かされます。

 もちろん、活動技法をたくさん紹介したマニュアル的な著書もあり、それらの本にも優れた 技法がたくさん載っていますが、まずは、それぞれの活動や素材の持つ意味ひとつひとつを、プレイセラピストが丁寧に理解できていると いう基盤があってこそそれらの技法を本当に子どもの発達のために活かせるのだと思います。そして、技法をただ場当たり的 に使うのではなく、臨床家の理論的な基盤に合った、自身が取り扱い可能な素材や活動を、個々の子どもの必要性に応じて、適 切な素材と活動を選びながら、セラピーを促進していくことが可能になるのでしょう。技法を学ぶということは、プレイセラピーで用いる 素材、つまり、おもちゃや構造、そしてセラピスト自身やセラピストと子どもとの関係、などの持つ意味や機能をセラピストが 十分に理解することであり、それを子どもの心の発達のために必要に応じて使えることなのだ、ということを学ぶための技法入門書として、本著書はとても優れていると思います。

(文責:湯野貴子)


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