第十回 今回ご紹介する本

Gil, E. (2006). Helping abused and traumatized children: Integrating directive and nondirective approaches. New York: Guilford.

 

今回は、1997年に出版された「虐待を受けた子どもの プレイセラピー」で皆さんもご存知のエリアナギルの最新本のご紹介です。
 
 プレイセラピーの中にも沢山の理論があり ますが、その理論の分類の仕方の一つに「非指示的」又は「指示的」という分け方があります。簡略に言うと、子ども中心プレイセラピーの様に、セラピーにお いて子どもがリードを取る遊びの中で現れてくる治療的要素をプレイセラピストがスキルを使って促進していくアプローチが「非指示的」。一方で、セラピスト がその時々に子どもに必要と思われる遊びの治療的要素を、技法を使って引き出し、子どもが体験できるように設定していくのが「指示的」アプローチと言える でしょう。 

 この2つのアプローチは相対するもの、両立しないもの、セラピストは二者択一しなくてはいけない ものと考える風潮があります。しかしギルは、子どもの発達、今までの体験、社会的サポート(家族、親戚、学校等)などを考慮した上で、両者をアセスメント と治療において組み合わせて使用し、最も効果的な治療環境を形成していく過程をこの本を通して提示しています。前回このページで技法のお話をした時にも(第九 回参照)、脈絡無くそして理解なく技法を使う事は効果的な治療に繫ながらない事について触れましたが、本書でも何をどういう意図で統合していくの かをセラピストが理解している事の重要さを強調し、プレイセラピーの中で適用できる表現療法、認知行動療法、家族療法、そしてトラウマフォーカスドプレイ セラピー等について各章で説明をしています。非指示的そして指示的アプローチを統合するとは、いわば、どちらか一つのアプローチを適用するよりもより多く のパズルのピースを組み合わせて行くような作業です。複雑になる分、しかし大局的な視野に立って治療にあたることができるようになります。又、本書では、 この統合的アプローチを用いた治療を行ったギルの4つの症例も紹介されており、実際どのようなセッションになっているのか、イメージがつかみやすくなっています。

 もう一つこの本の中では、子どもとの個人療法と共に、ギルが積極的に子どもが生きている環境・組織に関って行くシステミック(systemic)なアプ ローチを行っている事が書かれています。ソーシャルワーカー、弁護士、 医師、学校の先生、訪問サービス提供者、里親、親戚、家族が、虐待を受けた子どもを援助するチームのメンバーとなり、それぞれが連携して、情報を交換した り、治療に関ったりしていく体制は、特に、虐待問題に対する司法の関与がまだ浅い日本では、参考になる形態だと思われます。セラピストの治 療者としての力量だけでなく、一チームの歯車となる、また時にはチームのリーダーとなって子どもを援助する様々な力を最大限に活用していく力もこれからは 問われてくるのかもしれません。

 
 実はこの本、東京プレイセラピーセンターの私達が翻 訳中です。皆さんに早く日本語版を御届け出来るようにがんばります!


(文責:ファリス小川裕美子)



 

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