3.「はじめてのプレイルーム」冊子完成に寄せて


◆◆◆ファリス小川裕美子◆◆◆

  大人との 面接同様、プレイセラピーにおいても初回面接がとても重要なことは、多くのプレイセラピストの方が 実感されている事だと思います。初回面接の重みの理由は「治療者との初めての出会いの中には、患者が密かにもっている病理なり問題点なり、基本的な対人関 係のパターンなりが要約されて顔を出すということが認められる(小倉,1980)」からなのでしょう。私も今でも大きな緊張感や不安感、そして「この子と の旅はどのようなものになるのだろう」という興味心に包まれながら毎回初回のプレイセラピーを迎えます。


  大学院時代には、初回以前からプレイセラピストができること、するべきことが沢山あるということを私が見落としていたことに気づかされました。インテーク で保護者にプレイセラピーを説明し理解してもらう、そして子どもにもプレイセラピーの事を理解してもらって初回面接に来てもらうことの大切さ。そうするこ とはクライエントとしてやってくる子どもを尊重していることになるということを改めて実感しました。この冊子は、そのようなきめの細かい周到した初回まで の 準備をプレイセラピストができることを援助することを目的としています。

  こ の冊子を作成するにあたっては、色々なことを考慮してきました。プレイセラピーには、様々な理論があり、その理論によってアプローチは異なるし、状況に よっては、保護者や兄弟が一緒にプレイルームに入る事もあるし、子どもによっては自分の親とは離れて暮らしている子もいるかもしれない...女性のプレイ セラピストもいれば男性のプレイセラピストもいる...子ど もの主訴も様々...  と、プレイセラピーは本当に十人十色のプロセスを辿るものであることを実感させられ、その最大公約数をストーリーとして冊子に書く事の難しさを経験しまし た。実際にお子さんのいらっしゃるお母様や、現在プレイセラピストとして働いていらっしゃる方からの感想などを元に、少しずつより良いものを目指して改良 し、なんとか満足のいくものが出来たと思っています。

  以前、お子さんを初回のプレイセラピーにつれていらっしゃる前にお家でこの冊子をお子さんに読んであげてくださいね、と保護者の方にインテーク時にお願い し たところ、プレイセラピー初回にお子さんをお母様がつれていらした際、「私がゆっくり子どもと座って本を読んであげて、そのお話について話合う時間なんて 最近あまり取っていなかったものだから、子どもはとても嬉しかったみたいで、なんどもなんども『あの御本また読んで』って言ってきたんですよ」と報告して くださいました。そこでは、初回の前から既にセラピーが始まっていたようでした。

今後皆さんがこの冊子を色々な場面で活用してくださると嬉しいです。冊子を使ってみてのご感想などもお聞かせいただけると幸いです。

 




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◆◆◆湯野貴子◆◆◆

 絵本冊子「はじめてのプレイルーム」にご関心をお寄せくださいまして、
ありがとうございます。

 この冊子を作る動機は、大きく2つありました。ひとつは、私自身が大学院で学びたての知識と経験で教育相談所でのプレイセラピーを実 践し始めたとき、「プレイセラピーで何が行われているのかということを理解し、伝えるのは、なんて難しいんだろう」ともどかしく不安に思った体験です。は じめてプレイルームにやってくるお子さんや、お子さんを連れてくる保護者の方も、私が感じていたのと同じかそれ以上に、「プレイセラピーって何だろう?」 ということは不安に思っているだろうと思うのです。その後、知識と経験を得て、今の私は、プレイセラピーの効果や方法に自分なりに 確信が持てるようになっています。それでも、やはりはじめて出会うお子さんや保護者の方々は、以前の私の不安と同じ気持ち、あるいは、それまでの体験に よっては、とてもいやな気持ちや別の期待を持っている可能性もあることをいつも忘れずに、その気持ちに対して細やかに接したいと感じています。この絵本冊子は、子どもや保護者の方の、そういった気持ちを大事に受け取りたい、という思いで作りました。
 
  そして、もうひとつは、プレイセラピストは子どもとのプレイセラピーをするだけでなく、保護者の方と良い関係を持つこともまた大事で、保護者の方がプレイ セラピーの過程に加わることを助けることは、子どもの成長促進のためにプレイセラピーの効果を最大限にすることができる、という確信です。保護者の方にプ レイセラピーの過程に参加いただくことの効用はプレイセラピーの研究では、さまざまに言われていることでもあります。どのように参加いただくかは、理論や介入技法によって異なりますが、まずは、プレイセラピーとはどのようなものなのか、子どもがどういう体験をするのか、ということを保護者の方に伝え、ご理解いただくことは、どの理論であっても、必要不可欠だと思っています。保護者のかたにも、プレイセラピーのことが分かりやすく伝わるように、という思いもこめて作成し、本冊子の最後のページには、保護者の方に向けた解説もさらに加えました。
 
 本文は、ファリス小川さんと私(湯野)とで何度も推敲し、実際のプレイセラピストの皆さん、そしてお子さんをお持ちの保護者の方に読んでいただいて、さらに細かい言葉づかいなどを修正しました。イラストは、ご自身もプレイセラピストとしてご活躍中の寺沢由布さんにお願いしました。私自身が寺沢さんの絵が大好きで、そ の想像力と冒険心を刺激されるような、そしてどこか懐かしくやさしく、切なさもあるような雰囲気の絵は、本冊子の全体の雰囲気をとてもやわらかくしてくれ ました。

 6歳のお子さんを持っているお母さんに、この本をお子さんと一緒に読んでいただきました。一度ふたりで読んだ後、プレイルーム にどうして行くのか、プレイルームってどういうことをする場所かプレイルームに通っていくとどうなっていくのか、ということを、そのお子さんがお母さんに 話して聞かせてくれたそうです。こんな風に、お母さんとお子さんとでプレイルームに来る前にプレイセラピーについてお話ができるきっかけとなる絵本冊子と なれたことを知って、私もとても嬉しく感じました。
 
 この絵本冊子をお使いいただく機会がありましたら、ぜひどうかご活用いただき、そして、ご感想やご意見などをお寄せいただけましたら、大変ありがたく思います。



 

 
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